「妊娠がわかって嬉しいけれど、つわりが辛くて仕事を続ける自信がない」「退職したいけれど、今辞めたらもったいないのかな?」そんなふうに、お祝いムードの中で一人、電卓を叩きながら溜め息をついている方もいるかもしれません。妊娠を機に退職する割合は決して少なくありませんが、そこには「お金」という切実な問題が横たわっています。産休だけとって退職するのは会社に迷惑じゃないか、パートでも産休手当はもらえるのか、産休取らずに退職して後悔しないか、出産一時金はどうなるのか……。頭の中が「?」マークで埋め尽くされてしまいますよね。この記事では、そんなあなたが直面している「妊娠・退職・もったいない」という迷路の出口を、一緒に探していきます。
この記事のポイント
- 退職日次第で数十万円の手当がもらえる
- 失業保険は延長手続きで最大4年保存可能
- 扶養と失業給付の「130万円の壁」を攻略
- 2025年改正や保活リスクも踏まえて決断する
妊娠での退職はもったいない?失うお金の真実
「もったいない」という言葉の裏には、「本来もらえるはずだったお金をもらい損ねる」という恐怖がありますよね。実際、妊娠退職における損失額は、知識の有無で天と地ほどの差が開きます。ここでは、感情論はいったん置いておいて、制度の仕組みという「数字の事実」にフォーカスしてみましょう。

産休取らずに退職して後悔?出産一時金の条件
まず一番気になるのが、出産にかかる大きなお金のことですよね。「退職したら何ももらえないの?」と不安になるかもしれませんが、ここには誤解も多いんです。
まず、すべての妊婦さんの味方である「出産育児一時金」(赤ちゃん1人につき一律42万円、産科医療補償制度対象の分娩機関なら50万円)は、退職していても必ず受け取れます。退職後に夫の扶養に入れば夫の健康保険から、国民健康保険に入れば自治体から支給されるので、ここで「損をした」と後悔することはまずありません。
しかし、本当に注意すべきなのは、働いていた人の特権である★「出産手当金」★の方です。これは産休中(産前42日〜産後56日)の給与補償として、標準報酬月額の約3分の2が支給される制度です。月給24万円の人なら、総額で約50万円以上にもなります。
「辞めたらもらえない」と思われがちですが、実は以下の3つの条件をすべて満たせば、退職後でも「資格喪失後の継続給付」として受け取ることができるんです。
📌 退職後も出産手当金をもらうための「絶対条件」
- 被保険者期間が1年以上あること
退職日(資格喪失日の前日)までに、継続して1年以上健康保険に加入している必要があります。転職していても通算できる場合がありますが、1日でも未加入期間(国保など)があるとアウトです。
- 退職日が「産前42日」の期間内であること
出産予定日から逆算して42日(多胎は98日)以内に入ってから退職する必要があります。これより前に辞めると対象外です。
- 退職日当日に出勤していないこと
これが最大の落とし穴です! 退職日に「最後だから」と引継ぎや挨拶で出社して働いてしまうと、「労務に服した」とみなされ、その日の手当だけでなく、継続給付の権利そのものが消滅するリスクがあります。
たった1日の出勤や、退職日の設定ミスで50万円が消えてしまうのは、まさしく「もったいない」事態です。もし退職を避けられないとしても、この条件だけは死守するようにスケジュールを調整してくださいね。
産休だけとって退職は迷惑?パートの事例
「産休や育休の手当だけもらって辞めるなんて、会社や同僚に迷惑じゃないかな…」
真面目な方ほど、こうやって自分を責めてしまいがちです。特にパート勤務の方からは、「正社員じゃないのに権利を主張していいのか」という相談もよく耳にします。
でも、ここで声を大にして言いたいのは、「制度を利用するのは労働者の正当な権利」だということです。
パートであっても、健康保険や雇用保険の加入条件を満たしていれば、正社員と全く同じように産休・育休を取得し、給付金を受け取る権利があります。そもそも、出産手当金や育児休業給付金は、会社がポケットマネーから出しているわけではありません。あなたが毎月の給与から天引きされて支払ってきた「保険料」から賄われているのです。
「産休に入って辞めたいのですが」と切り出すのは勇気がいることですが、会社側にとっても、産休期間中は社会保険料の支払いが免除されるため、金銭的なデメリットは実はそれほど大きくありません。もし職場復帰が難しいと感じていても、まずは「産休を取得し、出産手当金を受け取ってから退職する」という選択肢を検討してみてください。
もちろん、業務の引き継ぎをしっかり行う、早めに相談するなど、社会人としてのマナーを守ることは大切ですが、「迷惑だから権利を放棄する」必要はどこにもありませんよ。
育児休業給付金を捨てる損失額
妊娠退職における「もったいない」の王様、それが「育児休業給付金」の喪失です。これは金額の桁が違います。
育児休業給付金は、雇用保険から支給されるもので、原則として「育休終了後に職場復帰すること」が受給要件です。つまり、妊娠中に退職した場合や、最初から復帰しないつもりで育休に入る場合は、受給資格がありません。
その金額を具体的にシミュレーションしてみましょう。
例えば、月給(額面)が30万円の方の場合:
- 最初の180日間(給付率67%):月額約20万円 × 6ヶ月 = 約120万円
- それ以降(給付率50%):月額約15万円 × 6ヶ月 = 約90万円
合計で約210万円です。育休を延長すればさらに増えます。
しかも、この給付金には所得税がかからず(非課税)、受給期間中は社会保険料(健康保険・厚生年金)も全額免除されます。手取り額で換算すると、働いている時の給与の約80%が保障されているのに等しいのです。
⚠️ 数百万円をドブに捨てる覚悟はある?
退職届を出すということは、この200万円以上の権利書を破り捨てるのと同じ意味を持ちます。「ちょっと仕事が辛いから」という理由だけで手放すには、あまりにも大きすぎる金額ですよね。もし「なんとかなるかも」という余地があるなら、育休取得までは歯を食いしばって在籍し続けるのが、経済合理性の観点からは間違いなく正解です。
ここでお金の話ばかりして疲れちゃったかもしれませんね。でも、知っておくことが大事。こういうときは、自分の体と心を労わることも忘れずにね。
ちょっと休憩がてら、こういうアイテムでリラックスするのもいいかも。
無理に買う必要はないけど、もし辛いときはこういうものに頼って、少しでも体を休めてみてね。
失業保険の受給期間延長手続き
「退職したらすぐに失業保険(基本手当)をもらえる」と思っている方は要注意です。失業保険の大原則は「今すぐ働ける能力と意思があること」。つまり、妊娠中や出産直後で「働けない状態」のときは、受給資格がないのです。
「じゃあ、もらい損ねるの?」と諦めるのは早計です。ここで絶対にやってほしいのが、★「受給期間の延長手続き」★です。
通常、失業保険をもらえる期間(受給期間)は、退職日の翌日から1年間と決まっています。何もしないと、出産して育児が落ち着いた頃には期限切れになってしまいます。しかし、妊娠・出産・育児などの理由がある場合は、この期間を「最大4年間」まで延長(凍結保存)することができるのです。
📌 「特定理由離職者」になれる可能性大
自己都合退職の場合、通常は2ヶ月〜3ヶ月の給付制限期間(待機期間のようなもの)がありますが、妊娠・出産が理由で退職し、それが認められると「特定理由離職者」扱いになります。
これに認定されると、給付制限が解除され、求職活動を開始してから(7日間の待機後)すぐに手当を受け取れるようになります。離職票の理由欄が「自己都合」になっていても、ハローワークの窓口で母子手帳を見せて事情を説明すれば変更できることが多いので、必ず相談しましょう。
手続きは、離職票が届いてからハローワークで行います(郵送や代理人も可)。最近は申請期限が緩和されましたが、忘れないうちに早めに済ませておくのが鉄則ですよ。
夫の扶養と130万円の壁
退職後は「夫の扶養に入って、保険料を節約したい」と考えるのが一般的ですよね。しかし、ここで立ちはだかるのが、失業保険との複雑な関係です。
よく聞く「103万円の壁」は税金の話ですが、社会保険(健康保険・年金)の扶養基準は「年収130万円未満」です。そして重要なのが、社会保険では「失業保険(基本手当)も収入とみなされる」という点です。
具体的な基準は、日額3,612円(60歳未満の場合)。
計算式:130万円 ÷ 360日 ≒ 3,611円
失業保険の日額がこれ以上の場合、「安定した収入がある」とみなされ、受給期間中は扶養に入ることができません。
| ステータス | 扶養の可否 | やるべき手続き |
| 退職直後〜求職活動前
(延長期間中) |
◯ 扶養に入れる | 夫の会社で扶養加入手続き |
| 失業保険 受給中
(日額3,612円以上) |
✕ 扶養から外れる | 扶養を抜けて、国民健康保険・国民年金に加入 |
| 受給終了後 | ◯ 再び扶養に入れる | 再度、夫の会社で扶養加入手続き |
「えっ、出たり入ったり面倒くさい!」と思いましたよね。でも、面倒だからといって失業保険をもらわないのは一番の損です。例えば日額5,000円を90日分もらうと45万円。そこから3ヶ月分の国保・年金(約10万円弱)を払っても、手元には35万円以上残ります。少しの手間で得られる金額が大きいので、ここは事務的に淡々と手続きをこなしましょう。
住民税と国民年金の免除制度
退職後の家計を圧迫する隠れた伏兵、それが「住民税」です。
住民税は「去年の年収」に対してかかってきます。つまり、退職して収入がゼロになった翌年に、現役時代の年収に基づいた高額な納税通知書が届くのです。これはもう、避けられない「時間差攻撃」のようなもの。退職金や貯金の中から、年収の10%程度は納税用に取り分けておく必要があります。
一方で、絶対に活用すべきありがたい制度もあります。
それが★「国民年金の産前産後期間の免除制度」★です。
📚 保険料0円なのに「納付扱い」の神制度
国民年金第1号被保険者(退職して国保に入っている人など)が出産する場合、出産予定日または出産日が属する月の前月から4ヶ月間の保険料が免除されます。
この制度のすごいところは、単に支払いが免除されるだけでなく、将来受け取る年金額には「保険料を全額納めた期間」として反映される点です。申請しないと適用されないので、退職して国民年金に切り替える際は、必ず市役所の年金窓口で手続きしてくださいね。
妊娠の退職をもったいない結果にしないために
ここまでお金の話を中心にしてきましたが、「もったいない」の意味は金銭的なことだけではありません。キャリアの断絶や、子どもを預ける場所が見つからないリスクなど、ライフプラン全体に関わる問題です。ここからは、退職を決断する前に知っておいてほしい「未来のリスク」と「回避策」についてお話しします。

つわりで退職する前の休職検討
「つわりがひどくて電車に乗れない」「仕事中に何度もトイレに駆け込んでしまう」。そんな過酷な状況で、もう辞めるしかないと追い詰められていませんか?
もし、退職の理由が体調不良だけなら、一度立ち止まって「休職」という選択肢を検討してみてください。医師から「重症妊娠悪阻」や「切迫流産」などで自宅療養が必要と診断されれば、健康保険の「傷病手当金」を受給しながら会社を休むことができます。給与の約3分の2が最大1年6ヶ月支給されるので、経済的な不安も軽減されます。
また、法律(男女雇用機会均等法)には「母性健康管理措置」という規定があり、医師から指導を受けた場合、会社は時差出勤や休憩時間の延長、軽易な業務への転換などに応じる義務があります。
辛い時期を「休職」で乗り切ることができれば、そのまま産休・育休へと繋げられる可能性が出てきます。そうすれば、先ほどお話しした数百万円単位の給付金も受け取れますし、何より「仕事を続けられた」という自信にも繋がります。退職届を書く前に、主治医に診断書が書けないか相談したり、会社の人事担当に休職制度について聞いてみたりすることをお勧めします。
つわりの時期は本当に辛いですよね。少しでも楽に過ごすために、こういうアイテムを取り入れてみるのも一つの手かも。
自分に合いそうなものがあれば、試してみるのもいいかもしれません。無理せず、自分の体を一番に考えてくださいね。
2025年からの育休給付金改正
これから出産を迎える方にぜひ知っておいてほしいのが、2025年(令和7年)4月から施行される育児休業給付金の制度改正です。
これまでは、育児休業中に退職してしまうと、その退職日が属する月(支給単位期間)の給付金は、1円ももらえなくなるのがルールでした。しかし改正後は、「やむを得ない事情で退職する場合」に限り、退職日までの日割り分が支給されるようになります。
⚠️ 「やむを得ない事情」とは?
ここで勘違いしてはいけないのが、「最初から退職前提の人」や「なんとなく辞めたくなった人」は対象外だということです。
対象となるのは、以下のようなケースです。
- 夫の転勤に帯同する必要が出た
- 保育所に入所できず、復職が不可能になった
- 本人の病気や怪我で就労困難になった
つまり、「復帰するつもりで育休に入ったけれど、予期せぬ事態で辞めざるを得なくなった人」への救済措置です。「育休だけもらって辞めよう」という計画的な退職には使えないので、過度な期待は禁物ですよ。
求職中の保活と入園指数の罠
一度退職してしまうと、将来再就職しようとした時に立ちはだかるのが、あまりにも高い「保育園の壁」です。
認可保育園の入園選考は、親の状況を点数化した「指数」で決まります。フルタイムで働いている人や育休中の人は満点(例:40点)に近い点数がつきますが、退職して「求職中(これから仕事を探す)」の人の点数は著しく低く設定されています(例:10点〜20点)。
都市部の激戦区では、満点の共働き夫婦でも落ちることがあるのが現実です。そんな中で、点数の低い求職中の人が入園枠を勝ち取るのは至難の業です。
- 保育園に入れないから、面接に行けない・採用されない
- 仕事が決まっていないから、保育園に入れない
この「負のループ」に陥ってしまうのが、妊娠退職の最大のリスクとも言えます。「子供が1歳になったらまた働けばいいや」という計画は、保育園事情によって脆くも崩れ去る可能性があることを、覚悟しておく必要があります。
保活について詳しく知りたいなら、こういうガイド本を参考にしてみるのもアリかも。
▶ 保活ガイド本
地域によって事情は違うけど、早めに情報を集めておくと安心材料になるかもしれませんね。
妊娠を機に退職する割合とよかった人の声
ここまで厳しい現実ばかりをお伝えしてきましたが、それでも妊娠を機に退職を選択する女性はたくさんいます。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、第1子出産前に就業していた女性のうち、出産後も就業を継続したのは約半数以上ですが、逆に言えば約3割〜4割程度の女性は妊娠・出産を機に退職しているというデータもあります。(出典:国立社会保障・人口問題研究所『第16回出生動向基本調査』)
実際に退職を選んだ方からは、金銭的な損失を上回るメリットを感じたという声も多く寄せられています。
- 「切迫早産のリスクがあったので、仕事のストレスから解放されて無事に出産できたことが何よりの財産」
- 「初めての育児に専念したくて退職。子供の『初めて』を全部見守れた時間はプライスレス」
- 「激務の職場を辞めるいいきっかけになった。今は子育てと両立しやすいパート勤務で、以前より幸福度が高い」
「もったいない」かどうかは、銀行口座の残高だけで測れるものではありません。心身の健康や、家族との時間を優先した結果の退職なら、それはあなたにとって「正解」なのです。
妊娠退職はもったいない?納得する道を選ぶ
結局のところ、妊娠退職が「もったいない」かどうかは、あなたの価値観と優先順位次第です。
【経済合理性・キャリア重視派】
生涯賃金を数千万円単位で守りたいなら、絶対に辞めてはいけません。どんな手を使っても(休職、時短、家族の協力など)在職し、産休・育休給付金をフル活用すべきです。その苦労に見合うだけのリターンは確実にあります。
【健康・ライフスタイル重視派】
「今は無理をする時期ではない」と割り切るなら、退職も立派な戦略です。ただし、その場合は「知識不足で損をする」ことだけは避けましょう。今回ご紹介した以下の手続きをフル活用してください。
- 出産手当金の継続給付条件を満たす退職日設定
- 失業保険の受給期間延長申請
- 国民年金の産前産後免除申請
- 夫の扶養への加入と脱退の管理
これらを確実に行うことで、金銭的な「もったいない」を最小限に抑えつつ、納得のいく退職生活を送ることができるはずです。あなたが選んだ道が、あなたと赤ちゃんにとって一番幸せな道になるよう、応援しています!
最後に、家計管理に役立つかもしれないアイテムを置いておくね。
退職して収入が変わるときこそ、家計を見直すいいタイミング。もし興味があれば、チェックしてみてね。
Q&Aで解決!妊娠で退職はもったいない

Q1. つわりで急に辞めることになりました。出産手当金はもらえますか?
A. 退職日が出産予定日の42日(多胎98日)前に入っていないと、残念ながらもらえません。また、被保険者期間が1年以上あることも条件です。
Q2. 夫の扶養に入ったら、出産一時金はもらえませんか?
A. もらえます! 夫の扶養に入った場合は、夫が加入している健康保険組合などから支給されます(または病院への直接支払制度を利用)。金額も原則変わりません。
Q3. 失業保険の延長手続きはいつまでに行けばいいですか?
A. 退職日の翌日から30日経過した後、早めに申請するのがベストです。現在は「延長後の受給期間の最後の日まで」申請可能ですが、遅れると受給日数が減るリスクがあるので、離職票が届き次第、体調の良い時に行きましょう。
Q4. 住民税が払えないほど高い場合、どうすればいいですか?
A. 自治体によっては、退職や出産による収入減少を理由とした減免制度がある場合があります。納付書が届いたら放置せず、すぐに役所の納税課に相談してみてください。
Q5. ボーナスをもらってから辞めるのはマナー違反ですか?
A. 権利としては問題ありません。ただし、賞与の支給要件(支給日に在籍していること等)を就業規則で必ず確認しましょう。円満退職のためには、早めの報告と引き継ぎが重要です。
※本記事は2025年時点の情報を基に執筆しています。制度の内容は変更される可能性があるため、具体的な手続きについては必ずハローワークや年金事務所、お住まいの自治体窓口でご確認ください。